01.

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「次の模試で前より成績が下がったら塾に行かなきゃね。スマホもリビングの鍵付きボックスに入れて、父さんか母さんの見ている前で必要な連絡だけに使う」  母親が怒りを含んだ口調で、光平にそう告げた。 「いくらなんでもそれは無理だよ」  突然の予期しない宣告。勉強の合間の息抜きだと反論したいけれど、「息抜きの時間が長すぎる」と言われるのは目に見えている。そしてそれは正しいので、何も言えない。 「ねえ、せめて鍵付きボックスにスマホを入れるのだけはやめてほしい」 「どうして?」  母親がたずねる。 「だって、勉強でわからないことがあるとき、すぐに友達に聞けるし、検索すればいくらでも問題の解き方とか解説動画を見られるじゃないか。勉強のためにも必要なんだよ」  光平の言葉に母親は無言。光平の言葉の意味するところを、念入りに検証するように。 「なら、次の模試で前より良い成績を取ればいいだけじゃない」  この問題どうやって解くんだったっけ。  さっそく勉強をはじめた光平は、さっそく課題を前に悩みはじめる。  教科書やノートを開いても、解き方がイマイチはっきりわからない。いや、この公式を当てはめればいいのだろうけど、答えがどうしても合わない。なぜそんな答えが導けるのか、手がかりがつかめない。  複雑な問題を前に脳みその混沌は加速度的に入り組み、やがて混沌の渦から抜けさせなくなってしまう。  光平はスマホに手を伸ばす。  こうなったら、解き方を検索するしかない。
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