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広い公園の中央には、立派な噴水がありキラキラと輝きながら水飛沫を上げていた。周りの子供たちが楽しそうにそれを眺めている。
そろそろ夏が近づいてきていた。日は長くなり蒸し暑い。じんわりかいた汗で、着ているシャツが肌に張り付いて気持ち悪く思った。ほんの少しだけ風が吹いて髪を揺らした。周りにある木々たちも音を立てて揺れる。
はあ、とため息が漏れた。
噴水から少し離れたベンチに一人腰掛け、私はぼんやり手元を眺めていた。
『みなみ、家に帰って来てもいいのよ』
スマホに浮かぶその文章を見るたび、母の心配そうな顔を思い出して胸が痛んだ。一人暮らしをする時も心配かけたくせに、結局今も心配させてしまっている。
なんて返事を返そうか迷い、結局止めた。何度目かわからない息を吐いて空を仰ぐ。真っ白な雲が浮いていて、どこからか『綿飴みたいで美味しそう!』なんて子供の声が聞こえた。その純粋な考え、私も幼いころはあったのになあ。
就職のために家を出て、必死に働くこと一年。私は先日退職したばかりだ。
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