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私の妹
学校から家に帰ると妹が平日真っ昼間にパジャマ姿でポテチを貪っていた。
「あ、おふぁえり(おかえり)お姉ちゃん」
部屋の入口付近に立っていると、双子の妹の片峯紫が姉である片峯藍に迎えの挨拶をする。
片手にはゲーム機。
器用に機械の端を持ってゲーム画面を水平に保っている。その手が重みに小刻みに震えていた。
「あんた……腱鞘炎になるよ」
鞄を机におろし藍は部屋の床に寝そべる妹に姉らしく注意する。
中学三年、十五歳という若さで腱鞘炎を患うのは勘弁だ。
「だってーポテチ食べた方の手で支えたくないじゃん」
「そりゃそうだけど、まずお菓子食べるかゲームやるかのどっちかにしなよ」
「やだ。ポテチ食べながらのゲームが最高じゃん。わからんのか」
「わからんな」
ぐうたら民の言うことは。
「ほいこれ」
食べる? とポテチの袋を紫に差し出されるが藍はノーと断る。
スナック菓子は好きじゃない。
片峯紫は明るい登校拒否児だ。
学校に行かず毎日家で(たまに外も歩く)ぐうたら生活を続けている。
「今日は学校早いね」
「もうすぐ試験だからね。午後の授業はカットなの」
「じゃあ遊び放題じゃん。一緒にゲームしよう。対戦モードあるよ」
「勉強時間確保のための休みだってーの。勉強します」
「ちぇ、優等生が」
言葉で舌打ち風味の音を出す。本当の舌打ちは感じが悪いからやりたくないとの意。充分行儀悪いが。
「ねえねえ、それより見てよこれ」
紫が近くに転がっていた小さなトング(?)のようなものを掴み言う。
「なにこれパンでも掴むの?」
「ポテチ用箸っていうんだよ。百均に売っててさ。現代人は箸でスナック菓子を食べるんだよ。これで手が汚れずにゲームもスマホもできるってわけ。まったく、こんなものが出るなんて世の中進化してるだか退化してるだか」
「……のわりには手で食べてるじゃん」
「手で食べた方がやっぱ楽だし。あー百均まで行って損した。ついでに百円も損した」
「そんなことのためにわざわざ百均行くなよ」
「だってやることないし暇じゃん」
「いや学校行けよ!」
寝転がる妹を転がした。
あーれーと転がされる紫はどこか楽しそう。
今日も我が妹は愚かで元気だ。
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