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草をむしる妹
紫はずっと家に引きこもってるわけでもない。
草むしりが趣味な紫はよく自宅の庭で草をむしっている。
この日も家に入ろうとする手前、庭先で草むしりする妹を発見。
「そんな小さい芽よく見つけるね」
「こういう小さい芽こそとらなきゃいけないの。爺ちゃん目悪いし」
ちなみに同居する祖父の趣味も草むしりだ。
「別に爺ちゃんが見えるまでほかしときゃいいじゃん」
「ダメ。悪い芽は早く摘んどくっていうでしょ。それに私草むしり好きだし」
「枯れた趣味だな」
「実績もあるんだぞ。クラスで開催される草むしり大会で優勝したし。学年で私が一番むしってたね。ゴミ袋が倍だった」
「へーあんた学校行ってる時期あったんだ」
紫が学校に登校する姿はここ一年見たことがない。
いや、一度だけあった。
藍が退院して学校登校を再開する日、紫は一度だけ藍と一緒に学校に登校した。
……その後紫が登校することはなかったが。
きっと、藍が事故で記憶をなくす前は学校へそこそこ楽しく通っていたんだろう。
「私に記憶があればなぁ」
知られざる妹の青春時代を聞き私が呟くと妹は「う、」と言葉を詰まらせた。
「まあかつて昔の話だよ。こんな話やめやめ」
「えーなんで。また学校行って草むればいいじゃん。あんたなら大活躍できるよ。一躍人気者だよ。大会が開催されるかは知らんけどなんなら私が草むしり大会主催者に」
「遠慮しとく」
あっさり学校勧誘を妹に断られる。
「一人で黙々草むしる方が好き。多くて爺ちゃん参加。学校の奴らお喋りだし集中してる時に話し返さないといけないのマジで面倒」
「そういやあんたって人見知りしないよね」
「なんで知ってるの」
「よくウチの玄関で担任の先生と楽しそうに話してるじゃん」
紫は学校に行かないため毎回週末に紫のクラス担任がプリントや提出物を家に届けに訪れる。
つい先週も玄関先で紫のクラスの担任と紫が今期の覇権アニメについて熱く討論してる姿を見たばかりだった。
「見てたのかい……」
「不思議だなー。紫って運動神経もいいし人気者になれるタイプじゃん。学校行きたくなくない気持ちがわからない」
「登校拒否の理由なんて人それぞれだよ。絶大な理由もあればなんとなくもある。それにね、暗い奴にだって友達はできるし逆に明るい人気者ほど闇が深かったりする」
「紫は闇が深いんだ?」
「私は闇そのもの。ブラックホール&ダークマター、漆黒の闇を胸に抱かれし者だよ」
突然厨二病を発揮しだす妹を見て今日も紫が健やかだと安心した。
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