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「どういうこと?」
藍は居間でゲームをする紫に言った。
「なに。どしたの」
「部屋を掃除してたら出てきたの、これ。紫って絵描けたの?」
藍が手にした画用紙を見て紫はコントローラーを動かす指を止める。
「……その絵を描いたのはね、私じゃない。紫だよ」
「紫? 紫はあんたじゃないの」
自分の名前を他人のように呼ぶ妹に藍が問う。
「ねえ紫。あんたは一体何者なの? あんたは本当に私の妹?」
「……」
藍の視線に紫は一呼吸置くと紫は覚悟を決めたように口を開いた。ひとつひとつ、言葉を選ぶように。重さと責任を含んだ声色で。
「その絵はたしかに紫が描いたものだよ。“あの頃”の紫が描いた。お姉ちゃんが……いや、紫。あんたが“まだ”私の妹だった頃描いた絵だ」
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