雨の記憶

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去年の今ごろ、ちょうど今日みたいな 梅雨の雨降りの日に初めて食事をした。 課長同伴で営業先に行った帰りで、 『なんか、ちょっと寒いよな。 遅くなったし、なんか温かいものでも 食べて帰るか?今日は直帰だし。』 そういって黒崎は、とても良い雰囲気の 蕎麦屋に連れて行ってくれた。 年は離れていたけど、同じ趣味があったりと 会話はけっこう盛り上がった。 その後、1ヶ月くらいは社内でちょっと 話す程度だったけど、 梅雨が空けた暑い日の昼休みに、 突然、黒崎からLINEが来た。 【黒崎亮太】 俺、今日久々に電車なんだけど、 飲みに行かないか?お酒は、飲める? 私は、ドキンとして思わず箸を止めた。 胃がキュッとなり、一瞬、食欲が無くなる。 【中井真由】 お酒、好きです!行きたいです🎵 と送った。 すぐに既読になり、ピコンと鳴った。 【黒崎亮太】 お!いいね。じゃ、平井駅北口で 待ち合わせようか。18:30。 【中井真由】 わかりました。楽しみにしています。 自然と顔がほころんでいた。 『なぁにぃ?まゆったら。 真顔になったと思ったら、ニヤニヤして~』 同期で仲良しの千春が笑いながら 私を見ていた。 「ちょっとね。」 と、私は意味ありげに微笑み、 急にお腹が空いて、お弁当をつつき始めた。
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