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チビの早とちり(1)
病の原因が感染症と言ことで、日本国内に遺骨は持ち帰れなかった。
だから、妻の京子とユミは現地に赴き社葬の主催者となり、妻の京子は喪主として辰則を弔った。
帰国後も親族はじめ辰則の関係者への対応の忙しさに追われながらも、気丈な一面を見せていた京子だった。
だが、四十五日の法要を済ませたころから、それはやって来た。
国内に勤務していたころの辰則なら、そろそろ帰宅していたであろう午後8時頃、
その頃になると何故か心がざわつき始める。だが今夜も『ただいま』とは誰も言ってくれない。
そのような空虚な生活を重ねるうちに、やがて京子の中で寂しさが辛さに変化していった。
・・・・・・・・・・・・・・
井原ユミ:「だめ! そんな、パパが亡くなってまだ半年だって言うのにママが再婚だなんてありえない、絶対イヤ!」
桃栗徹:「違う!違うよ! 僕が話してんのは、井原さん家のパパが亡くなって、ママさんが寂しがってるんなら、僕ん家のパパを何日かだけ貸してあげようかって、それを提案しただけじゃん!」
井原ユミ:「それじゃまるで『レンタル・パパ』じゃん?」
「うん、・・まぁ、そんなとこかな?・・そうだよ!僕の言いたかったのは、その『レンタル・パパ』だよ。井原さんって上手いこと言うよね。」
まぁ、小学4年生らしいと言えばそうだけど、『君ん家のパパが居ないのなら僕のパパを貸してあげようか?』だなんて、面白い発想だよね。
柴の忠犬チビ:(花子さん、ちょっと今の聴いた⁉ パパを貸すからレンタル・パパだって、ねえ、どう思う?)
柴の忠犬花子:(いいんじゃない⁉ この際、私もチビちゃんっ家へレンタルしちゃおうかな?)
井原ユミ:「あれっ、チビッ! チビったらいきなりお腹見せたりしてどうしたの? それにクンクンって甘え鳴きしちゃって・・おかしな子⁉」
(花、花子さんさへ良ければ・・おっ、俺は・・別に構わないよ)
{俺ってどうしたんだ、こんなに胸がピコピョコっていうかドキドキっていうか、気持ち悪う~・・体中が揺れ出したじゃん。
俺の脈拍と同期して体が揺れる、ほら聞いて動悸も激しいよ!}
チビちゃんさ、幾ら柴犬が賢いからって、脈拍や動悸なんて分かりっこないんじゃない⁉ そんな医学語ってどこで学習したの?
{そうしてみんなして俺を馬鹿にするがいいぜ、だってよ、ママたちが俺を動物病院に預けた時さ、頼みもしねえのに健康診断なんかしやがったんだぜ!}
「先生、チビちゃんの脈拍正常でした。」
{確かそんなこと言ってたかな? それに仰向けにされてさ、体温を測られた時なんか・・
(そんなとこ触るな!)
って訴えたんだけど・・「チビちゃん、お願いだから大人しくしてよ。」
なんて哀願されたもんでさ・・そりゃもう・・ドキドキさせやがってさ!}
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