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駆け落ち実行
井原家のチビも、桃栗家の花子も夜になるとお部屋に上げてもらい、一晩を家族と共に過ごすことになっている。
勿論、その時だけは首輪からリールが外されるはずだ。
二人、いや二匹はこのチャンスを狙っていた。
「さぁ、チビ、お家に入ろうか。」
ユミはチビの首からリールを外すと玄関戸をいっぱい開けた。それはいつものようにチビに背を向けてである。
「チビちゃん、ハイどうぞ!」
でも、いつものようなチビの動く気配が無い。
「チビ! 早く入ってよ、今日はどうしたの?」
ユミは後ろを振り返った。だが時遅しユミの視界からは既にチビの姿は消えていた。
「ママ大変、チビが居なくなっちゃった!」
「そう言えば最近、こんなことが続いてるわね、でも暫くすると帰って来るみたいよ、だからユミちゃん、不用心だけど玄関の戸、少しだけ開けて置いてくれる。」
だが、これまでの予行演習とは違い、この夜のチビは帰ってこなかった。
その頃、奇しくも桃栗家でも同じことが起こっていた。
チビ達にとって、このできごとは珍しくも、不思議でもない、それはチビと花子の駆け落ちの実行日だったからだ。
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