君と見たあの夏の夢の話

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ー自分が本当は真ではないことを知った後ですー  しばらくすると医者がやってきて僕に何事もないのを確認すると、僕は家に帰るよう言われた。まだまだひまわりに話したいことや聞きたいことがあったが、叔父さんに家まで付き合ってもらい帰ることにした。家に帰ると弟、いや兄さんの部屋の扉が開いていた。見ると母さんが兄さんの教科書やノート、思い出のものを眺めていた。 「母さん、僕思い出したよ」 そう言うと、母は大きく目を見開きこちらを見た。その目には徐々に涙が浮かんできて 「そう、もう本当に真はいなくなってしまったのね…」 「あぁ…」 母さんは泣きながらこう言った。 「でも、あなただって私の息子よ。真も2人はいつまでも私の子供」 そうして僕を抱き寄せ泣き続けた。母の温もりを感じたのはいつぶりだろう。16歳だなんて思い込んでいたが、まだ心も体も12歳のままだった。僕も母の腕の中で、翌日目が腫れるまで泣いた。  次の日は清々しいくらい気持ちが晴れやかだった。もちろん完全に思い出せたわけではないけど、今までの心のモザイクが取れたようだった。夜明け前、病院へ忍び込みひまわりの病室へと向かった。 ひまわりはもう起きていて「どうしたの?こんな時間に」と尋ねた。 僕は「事件の答え合わせをしよう」そう言って今日来た理由をひまわりに教えた。それは、高橋向日葵に会い花火大会の時のことと、そして爆破予告をした本当の理由を聞くためだ。以前旅行中にあった時、ある計画があると言っていたがその話をしている時の目はとてもこれから人を殺すような人の目には見えなかった。 そして昨日の夜、ひまわりと高橋向日葵が入れ替わるための条件を見つけた。それは、光だ。花火を見た時、日の出を見た時どちらも強い光が僕たちを照らした。こんな安直な方法でいいのかと思ったが他に方法がない。だから僕は夜明け前に忍び込んだのだ。それを説明するとひまわりは 「じゃあ、もうすぐ向日葵さんになるんだね」 「あぁ、必ず爆破をやめさせる。そして、僕も完全に記憶を取り戻してくるよ」 そうして夜が明け、ひまわりは高橋向日葵と入れ替わった。 「また会ったね」
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