目覚め(俺)

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目覚め(俺)

目が覚めた時、俺は知らない部屋のベッドの中だった。 天井は木で、壁も木で……木に囲まれた古い小屋には、俺がいたボロ小屋みたいなカビの臭いも腐った木の臭いもしない。 俺を包むのは、今まで触れた事もなかったふかふかの布団だ。 あ……身体……。 どこも痛くない……。 って事は、俺は死んだのか? 死んだ後は地獄ってとこに行くんだと聞いていたが、ここがそうなんだろうか。 俺はこれからここで何をすればいいんだろう。 ぼんやりと部屋の中を見回す。 難しそうな本がたくさん積まれていて、上には埃が被っている。 壁の一面には本棚、窓はカーテンが閉められてる。 部屋の角に簡素な机と椅子。 落ち着いた木目の机の上には本が一冊と小さなランプ。 この辺りは日頃使われているのか、埃は無かった。 キィと小さく木の軋む音がしてそちらを見れば、さらりと揺れる銀色の髪。 細い眼鏡の向こうから闇色の瞳が俺を見て、驚いたように見開かれた。 そうだ。この人は確かにあの時見た……。 「良かった、目が覚めたんですね。痛いところはありませんか?」 美しい人は、その姿によく合う柔らかな声でそう尋ねた。 ……俺の……事だろうか……? ベッドに座ったまま、後ろを振り返る。 そう広くないこの部屋には、俺とこの人しかいないようだ。 「ふふ、あなたの事ですよ」 小さく笑うその人は、輝くように美しかった。
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