2話 冬のハエトリグモ

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「ん……っ……」 柔らかな唇が、俺の唇に重なっている。 え、と……これ……、息は……しても、いいんだよな? それでもミスジに勢いよく鼻息をかけるのはまずい気がして、そろそろと鼻から息を吐く。 だめだ、間に合わない。心臓がバクバク言ってて息が苦しい。 口から息を吸おうと開いた俺の口内へ、ミスジの舌が入り込む。 「こーたさん……」 口の中でミスジに名を呼ばれる。 ぅぁ。何だこれ。ぞくぞくする。 ぎゅう。と強く唇を押し付けられると、求められているようで胸まで苦しくなった。 さっき耳元で囁かれたミスジの甘い声が蘇る。 『こーたさんが欲しいんです……』 思い返すほどにじわじわと下腹部へ血が集まってゆく。 なんだよ。全然抵抗無いじゃないか。 どうやら俺の体は、男相手でもすんなり勃つらしい。 いや、男相手じゃなくて『ミスジだから』なんだろうな……。 ミスジの小さな舌が俺の口の中をペロペロと舐め回す。 なんだこの拙い……って言ったら悪いな、えっと、健気な感じは。 実家の犬にべろんべろん舐められるのに比べたら、なんかこう……物足りないと言うか……。 「こーたさん、服脱いでください」 ミスジはひょいと俺から体を離して言った。 「あ。ああ……」 つい素直に頷いて、俺は一枚きりのシャツを脱ぎ捨てる。 「下もですよ?」 言われて、狭いクローゼットの中で何とか身を屈めてトランクスを脱ぐ。 ……ん? お前は脱がないのか? 「ふふっ、こーたさんの、もう勃ってるんですね」 ふわりと花のように微笑むミスジが、大きな眼鏡の奥から真っ暗な闇色の瞳で俺のものを見つめている。 「とっても可愛いです。こーたさん……いっぱい気持ち良くなってくださいね?」 熱っぽく囁きながら俺の上へ覆いかぶさってくるミスジ。 いつも愛らしいミスジの微笑みが、どこか妖艶に見えてしまう。 ミスジは片手で俺の胸を撫で回しながら、もう片方の手を俺のものへとゆっくり伸ばす。 誰にも触れられたことのないそれを、今からミスジに触られる。 そう思った途端、緊張と興奮が激しく混ざり合った。 心臓がバクバクいって、まるで耳元で鳴ってるみたいだ。 ミスジの細い指がするりとそれを撫でれば、思わず腰が浮いた。 「……っ」 「こーたさん、もうこんなにガチガチですよ? いつからしてなかったんですか? 神様は、人間の雄はマメに出さないと体に悪いっておっしゃってましたよ?」 「っ、だから……、お前の神様は何を教えてるんだ……」 「ねぇ……ぼくに……遠慮してたんですか……?」 「そんなんじゃ、な……っンンッ!」 根元から先端へと向かうミスジの指が、くびれをくるりと刺激する。 「ふふふ。こーたさん、やっぱり優しくて、可愛いです……」 いや、可愛いのは俺じゃなくてお前の方だよな? なんか、さっきからちょっと、おかしくないか……? ミスジは柔らかく微笑んだまま、自分のズボンの前をくつろげる。 そこからは、小柄な体格と顔に似合わず巨大なものが顔を出した。 「ほら、こーたさんを見てたら、ぼくのもこんなに大きくなっちゃいました」 ミスジは自身のそれを俺のものへと押し当てる。 「っっ!」 ゴリっとした硬さに、息を呑む。 な、なんかその……俺のより、凶悪な感じしないか……? 「ぼくと一緒に気持ち良くなってくださいね」 ミスジはにっこり微笑むと、両手で二本をしっかり包み込み、扱き始めた。
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