折り鶴の奇跡

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僕の学校には宗教の授業がある、この話は授業中に先生が話してくれた少し不思議な話。 先生は教師歴三十年越えのベテランだ、学校の全てを知っていると言っても過言ではない。授業中に先生が 「ちょっと不思議な話をしよう」と言った 僕は先生の授業から脱線した話が好きだ、若い先生の流行りの話よりも、渋くてなんだか深い感じのする話が好きだ。 あれはもう二十年以上前になるなと先生が話始める。高校生になってはしゃいでバイクの免許を取って交通事故にあって骨折した人の話や、校長先生が森の中に入って蜂に追い回されて二箇所刺された話などをしてくれた。 色々な話の中で僕が一番印象に残った話がある。 長年学校に勤めていたら残念なことに事故や病気で亡くなってしまった方もいるらしい。 先生が授業を受け持っていた生徒さんは二人亡くなってしまった。一人は電車の警報音を無視して中に入ってしまって轢かれて亡くなってしまった、木っ端微塵になっていてとても痛々しかったと言っていた。 もう一人が病気で亡くなっている、その人は病気になる前は明るくて活発な人だったと言っていた。 授業中に体調が悪くなったらすぐに保健室に行きなさいと先生は言っていたらしい。 けどその生徒は 「今日はちょっとしんどいだけだから机で寝ておきます」と言ってそのまま眠りについた 授業が終わりチャイムが鳴って先生が寝ている生徒に声をかけても返事が無かったので。 別の生徒と数人がかりで立たせようとすると その生徒は力が抜けた操り人形のようにぐでっとしていた、そこで先生が亡くなっていることに気がついたらしい。 親御さんに 「私があの時に保健室に連れて行けば助かったかも知れないのに申し訳ないです」 と謝罪をしたら親御さんからは優しい言葉が返ってきたそうだ。 「あの子は病室で死ぬのは嫌だみんなに見送られながらがいいと言っていたので幸せに旅立たせてもらってありがとうございます。」 と言われた、先生は帰り道あの時の判断は間違っていなかったのかとほっとしたと言っていた。 月日は流れその生徒のお葬式があり先生のクラスは千羽鶴を折った、先生が代表でお葬式に参加し、火葬場に行くと他の人達や葬儀屋の人達がザワザワしていた。 「ちょっと見てくださいよ」 驚いた、なんとクラスで折った千羽鶴が何個か綺麗な状態で残っていたのだ、特別火に強い加工を施したわけじゃない、ただの安い折り紙だ灼熱の炎の中耐えられるわけが無い。がここに今残っている。 「こんなの初めて見ましたありえないです」 葬儀屋が口々に言う この折り鶴持って帰えられますかと親御さんが尋ねた鶴は何匹か残っていたので、ひとつ貰うことにした、そしてその鶴は先生の職員室の机に今も元気でいるらしい。
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