0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
先輩と後輩
毎朝、学校が始まる1時間前に部室の部屋に行くのが当たり前になったのは1年前だ。
部活なんて入るつもりもなかったのに、なぜか教科書に書いた落書きを先輩に見つけられてしまってから熱い勧誘を受ける日々が続いた。
最初は入部するつもりなんてさらさらなかった。というか、この学校には元々美術部が存在していない。これからつくるから入ってほしいと言われたときは、随分めんどくさいことに巻き込まれたと、そう思った。
それなのに、勧誘されてから1年たった今、なぜこんなにも真面目に通うになったのか自分でも不思議で仕方ない。
ガラガラ
「おはよう!那由多!」
「おはようございます。朝から元気ですね、先輩。」
「那由多は相変わらず表情筋死んでるね〜。
よーし元気になるおまじないかけてあげよう!」
「やめてください。どうせ髪ぐしゃぐしゃにするだけでしょ。」
「違うよ!頭なでてあげるの!」
「頼んでませんし、それでいつもぐしゃくしゃになるんですから、本気でやめてください。」
「もう!年上女性から頭撫でられるなんて男子高校生の夢でしょうが!」
「僕にそんな趣味はありません。そんなことより部室掃除しますよ。」
「はーい」
こんなくだらない会話をしながら、部室掃除を先輩とする。それがすっかり日常となった。今の美術部は着々とメンバーが増えてはいるが、朝掃除はいつも二人だ。
でもそれは俺にとって好都合だ。
1年前の自分からは想像できないが、この脳天気でおかしな先輩が俺は好きだ。
最初のコメントを投稿しよう!