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「梨花」と呼ばれ視線を向けると「こっちきて座って」と晴也が手招きした。
料理の手を止め、梨花はソファーに座る晴也の横に腰かけた。
「何?」
「お前さぁ、何でいつも俺に気を遣ってんの?」
突然核心を突かれ、梨花は言葉に詰まった。確かに晴也の顔色を窺うのが梨花の癖になっていた。それは、晴也が感情を表に出さないようになったからだ。
「俺、お前に気を遣わせるようなことした覚えもないし、脅したり貶したり文句を言ったこともないはずだよ?」
「……うん」
勿論そんなことは、今まで一度もなかった。
「結婚前には一緒に行ってた旅行も全然行きたがらなくなったし、俺に触れてもこなくなっただろ。俺、これ以上お前に嫌われたくない一心で、余計なこと言わないように、余計なことしないように気を付けてきたんだけど……」
――え? ええ?! 違う、違う! それは違う!!
「余計なこと言わないように気をつけてたら、会話はどんどん減っていくし、余計なことしないように部屋に籠って仕事してたら、すげぇ寂しくなるし……」
矢継ぎ早に言葉を投げ掛ける晴也に圧倒され、梨花は言葉が出なかった。
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