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「そんなことが言いたいんじゃないよ」
「じゃあ何?」
「だから……。俺は、お前が好きだけど」
「――え?」
「お前もまだ俺のこと好きでいてくれてる?」
言いたいことも聞きたいことも山ほどあったけれど、今はただ黙って頷いた。
「専業主婦になって、俺の為に頑張って家事をしてくれる梨花を見ながら仕事するのが好きだったんだ」
――監視されていると思い込んでいた視線は、それだったの?
「でも、仕事を頑張る梨花も好きだよ。……まあ要するに……梨花が好きってこと」
梨花は伝えるべき言葉を探していた。
「梨花には何の不満もないよ。でも、敢えて言うなら……」
「ん?」
「もう少しだけ俺の相手をしてほしい」
「やだぁ、何――」
梨花の目から大粒の涙がこぼれた。
【完】
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