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「これ、クジラじゃないかなあ」  地図の海部分に黒い大小の饅頭を並べたみたいな丸い物が浮かんでいるのを、じっと見ていた亮介が言った。 「なるほどね、きっとそうだよ」  百合は手を叩いた。   修一には黒い饅頭に見えていたものが、二人にはクジラの背中と尾びれに見えるらしい。 「クジラがいる海といえばW県?」  W県はホエールウォッチングで有名な観光地だ。  二人はリビングのPCを立ち上げ、W県とその近くにある海沿いの遊園地を探しはじめた。 「ここは?」 「海にはちかいけど、観覧車がないよ」 「じゃあ、もっと南かな」 「探してみると遊園地ってけっこうあるね」  佳子の地図を頼りにしていいのか、すこし不安ではあるがいくつか候補がしぼれたらしい。  写真と地図、チケットの半券にうっすら残っている黄色い文字を見比べていた二人が立ち上がった。 「それじゃ、準備して30分後に玄関に集合」  百合が修学旅行の引率の先生みたいな口調で言うのに 「りょうかーい」  と亮介が元気よく応答する。 「え? 行くの? 今から?」  二人のペースについていけず、修一はあわててヒゲも剃っていない顔を撫でて立ち上がった。
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