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私鉄とJR、地下鉄が乗り入れるT駅はO駅N駅にならぶ関西屈指のターミナル駅だ。
パンダの顔にペイントされた特急列車にのり、三人はW県を目指していた。
「まずM公園とO児童遊園から回ろう」
「Pドリームランドは?」
「海から距離があるけど、一応候補に入れて最後に回りましょうか」
「うん、そうだね」
スマホの画面を覗き込んで、亮介と百合が計画を立てる。
「じゃ、G駅でバスに乗り換えよう、その方が電車で行くよりずっと早いと思う」
「さすが隠れ鉄オタ! じゃあ修一さんにルート検索は任せちゃおうかな」
百合は人を乗せるのが上手い。
「し、仕方ないなぁ」
誰が隠れ鉄オタだ、の憎まれ口は亮介の「お父さんすごい」の眼差しの前に霧散した。
「ところで亮介」
と修一は気になっていたことを切り出した。
「お母さんはその、まだいるのか?」
「いるよ、窓の外に」
「今どんな顔してる?」
「わかんないけど、ぼく達を見てる」
「そうか」
修一は窓の外に目をやった。
民家や田畑、道路と車、目まぐるしい流景に懐かしい面影をさがしても、修一の眼にはありきたりな車窓の風景にしか見えなかった。
「百合、大丈夫か」
「平気よ、遊園地なんて久しぶり」
嬉しそうに百合は言った。
間もなく乗り換えの駅に到着するアナウンスが流れた。
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