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7
「空振りだったわね」
「まだツーストライクだよ」
M公園とO児童遊園はどちらも写真の遊園地とはアトラクションの配置が違っていた。
メリーゴーランドと観覧車は一葉の画面に収まる距離で、なおかつ観覧車の向こうはおそらく海だろう。
花火は海岸のどこかから打ち上げされたのではないだろうか。
「ずいぶん古い写真やね。こりゃE遊園地だよ、今もうこの観覧車はないけどね」
名物だというしらす丼と醤油ラーメンのランチセットを食べながら、3人でテーブルに置いた写真を眺めてあーだこーだと検証をしなおしていると、水のお代わりを持ってきてくれたおばちゃんが特大ホームランを打ってくれた。
E遊園地は観覧車がないからと、一番最初に候補から外れた遊園地だった。
「それ、どこですか?」
「K岬ってところが一番近いバス停になるね、ここから30分も掛からないよ。今日は臨時バスも出てるからね」
「臨時バス?」
「今夜は花火大会だもの」
3人は思わず写真の中の佳子を見た。
その時修一はたしかに、ごく身近に佳子の存在を感じた。
俺たちは最初からずっと4人でこの場所を探していたのだ。
幼さすぎて遊園地の名前を憶えていられなかった佳子。
でももう一度、佳子はこの場所へ来たかった。
家族と一緒に。
E遊園地はK岬の停留所から海沿いの遊歩道をしばらく歩いた場所にあった。
「わあ、見て!」
入園券を見て、亮介は大声を上げた。
明るい水色の地色に黒で縁どられた黄色いポップな文字でE遊園地と書かれている。
おそらく、佳子が大事にとっていた半券と同じデザインだろう。
百合と亮介はハイタッチした。
「やったね」
「いえーい」
その後、3人は佳子の写真が撮られた場所を探し当てて写真を撮った。
観覧車は取り壊されていたが、メリーゴーランドは改修工事を施され、あいかわらず煌びやかに回っていた。
被写体は百合と亮介。
しゃがみこんだ百合の肩に腕を回して、笑顔で写っている亮介は佳子にも修一にもそしてなぜか百合にも似ているように思えた。
「お母さん、まだいる?」
修一は今一度、亮介に尋ねた。
「もういない」
あたりを見回してそう答えた亮介は、寂しそうにも安堵しているようにも見えた。
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