リナリア

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「サイッアク……」 教室の机に、呟きながら突っ伏す。 今日も、新作のマニキュアの色まで被ったものだから、登校中の、木の陰に隠れて無理やりされた。 そのすぐそばでは、たくさんの生徒が歩いているというのに! ただ唇を触れるだけなら、まだ許そう。だが、姉はしつこいぐらいに重ね、さらに言うと舌を·····いや、これ以上振り返るのが嫌になる。 あの時もそうだったが、思い返すと冷めやらない身体に、さらに火がついてしまう。 「璃亜ちゃん、おはよ〜」 のし、とふんわりといい匂いをただ寄せる、ほどよい重みが背中に乗っかる。 この優しく包み込むような、ゆっくりとした口調で話すのは、あの子しかいない。 「撫子、おはよ…」 顔を横にさせると、顔を覗かせる友人が、にこっと笑った。 するりと、肩から溢れるさらさらとした髪も相まって、璃亜の心臓は高鳴った。 この同性ですら一目惚れさせてくれる友人は、男子にそれはもう大変人気で、しかし、自分には不釣り合いだと告る者はおらず、今もそうだが、友人と話しながらもチラチラ見ている男子らの視線を、璃亜は気づくが、当の本人は口調と同じく、のんびり屋で自身の身を察することなく、穏やかに過ごしている。 それはそれで危なかっしく、そんな友人をさりげなく悪意(特に男子)から守っている毎日を送っていた。 大変不本意であるが、いっそのこと撫子と同等の人気がある、我が姉の璃奈の方へ興味を行ってしまえばいいが。 「璃亜ちゃん、今日も遅刻しそうだったの?」 「あ、うん。夜中まで動画をついつい観ちゃって……」 まさか、ここに来る前に姉とあのようなことをして、顔を赤くしているだなんて言えないものだから、嘘を吐いてしまった日から、良心を痛めまくっている。 内心ずきずきと痛みを耐えている璃亜に、「前に教えてくれたハムスターの動画は、観ちゃうよね〜」と思い出しているのか、頬を染めて小さく笑っていた。可愛い。 自分も異性であったならば、高嶺の花の存在と化していただろう。 同性で良かったと思える、最大の特権だとHRを告げるチャイムが鳴るまで、癒しをもらっていた。
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