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手渡された写真に目をやる。鏡で見たときと違い、雑誌の切り抜きそのままの髪型だった。だけど、その髪型の下にはいつもの裕之の顔があった。ほんのり頬を赤らめ、裕之は恥ずかしそうに笑っている。
「写真、ありがとうございます」
裕之が礼を言うと、美容師は優しく微笑んだ。
「髪型を変えたくなったら、いつでもおいで」
「はい」はにかみながら頭を下げた。
裕之には気になる女子がいた。ふだん話すことはない彼女だったが、周りの子と好きなアイドルの話をしているのを裕之はぐうぜん耳にした。それが雑誌の切り抜きのアイドルだった。
美容室からの帰り道。裕之はドキドキしていた。
明日の朝、教室に入ったら、あの子は気がついてくれるだろうか。
裕之は明日、学校に行くのが楽しみだった。
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