明日学校に行くのが楽しみ

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 裕之はおずおずと雑誌の切り抜きを差し出した。  切り抜きには、流行りのアイドルグループの中でも爽やかさで人気のイケメンが、ふわっとした髪型をして写っている。 「できますか?」  裕之はもじもじと尋ねる。心臓が破裂しそうだった。 「ああ、いま人気のアイドルだね。彼、カッコいいよね。できるよ。ストレートヘアだし、おにいさんがちょちょいとやってあげるよ」  女性客が帰ると、裕之と美容師のふたりきりだ。裕之はホッと胸を撫で下ろす。いろいろと頼みやすくなった。 「中学生?」 「はい」 「何年生?」 「一年です」 「髪型にこだわるといいことあるよ」 「ほんとですか?」 「僕の店でカットした子は、男子も女子もみんなモテるよ」  美容師の柔らかい声が裕之の鼓膜を震わせ、じわじわと脳内に沁みてくる。 裕之は学校で振舞う自分の姿を想像した。想像するうちになぜかアイドルグループのイケメンの姿になった自分が瞼の裏に映し出された。  その後も美容師は気さくに話しかけてきた。だけど裕之の耳には入らない。頭の中がふわふわして、胸がドキドキしていたから。上の空で聞いていた。
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