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「できたよ」
美容師の声に我に返った。
鏡の前にはたしかにあの人気グループのイケメンがいた。正確にはイケメンの髪型をした裕之がいた。ただし前髪の流れる方向は左右対照になっている。それは鏡のせい。つまり実際の髪型は見事なまでに再現されているということになる。
「この髪型にするにはコツがいるから。やり方を教えておこうね」
美容師はワックスを手につけるとしなやかな手つきで、丁寧にやり方を教えてくれた。
「いまの状態を忘れないように、写真を撮っておこうね。スマホ持ってる?」
「いえ」
周りのともだちは持っていたが、裕之は高校まではダメだと親から言われていた。
「じゃあ、写真を撮ってプリントしてあげるよ」
美容師は優しかった。手際よく写真を撮るとプリンターで印刷してくれた。
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