2641人が本棚に入れています
本棚に追加
君塚家と白奥家は古くからの縁がある関係だった。
遠い昔、財政難に陥った君塚家を援助して救ったのが白奥家で、その時の縁があって、お互いの子孫で歳の近い者がいれば結婚させようという約束があったらしい。
白奥家の子と結婚すると、優秀なアルファが生まれると嘘が本当か分からないがそんな言い伝えがあるらしい。
今までタイミングが合わずに、その縁が叶ったことがなかったが、俺の代でついにお互いの家で歳の近い者が生まれてその縁が繋がれることになった。
まだ俺が赤ん坊の時に向こうから婚約という話が来て、両親は将来どうなるか分からないが、その時にお互いが良ければと返事をしたらしい。
両親としても、かなり昔に交わした約束を今の時代になって果たす必要があるのかと、その時は疑問に思っていて返事を濁していた。
そして時は過ぎて、かつてそんな話があったことも記憶から薄れていた頃、一通の手紙が届いた。
そこには、君塚家からそろそろ結婚を進めたいと話が書かれていた。
それだけで両親は慌てていたが、しかも君塚家からの手紙には、貴家のご息女である、玲香様を花嫁として迎えたいとあって、それを見た両親は顔面蒼白になって倒れた。
小学生の頃、ちょうどバース性の簡易検査をしてアルファという誤判定が出た時、それが俺の人生のピークだった。
その頃は何をやっても上手くいっていたし、たくさん友人もいて毎日が楽しかった。
しかし、それから何年かして風邪をひいたことがキッカケで、入院するほどの大病になってしまった。
順調に回復して退院できたが、体力はなかなか戻らず、家で過ごすようになった。
どうしても外へ出たくて内緒で家を抜け出したこともあったが、そのせいで無理をして熱を出してしまい、両親からひどく怒られた。
それからはほとんど外へ出ることなく、人を雇って家庭学習という形で教育を受けるようになった。
年を重ねて順調に体力がついて、体を壊すことはなくなったが、両親の心配は変わらずで、外へはほとんど出ることのない生活が続いた。
そして、中学の時の発作だ。
アルファという判定を受けていたのに、突然発情してしまい、運び込まれた病院でオメガだと判定を受けた。
これで両親の心配は爆上がり。
ますます外出は禁止されて、家という箱の中で、箱入り息子として育てられたと言っても過言ではない。
最初のコメントを投稿しよう!