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2・漆黒の神父服
「カルロ、あなたは愚かです。こんなところまで来てしまうなんて」
冷たくそう言って、私はカルロから目を伏せて、そらした。
胸がひどく切なく痛む。
自分が着ていた白い神父服は、いつの間にか、漆黒に変わっていた。
黒い神父服に、胸には金のロザリオが輝いている。
「私はもう館には戻れません。悪魔アザゼルが教えてくれました。レオナルドは死んだのでしょう。先日、搬送先の病院で息を引き取りました。私に撃たれたのは事故だと言い残して……」
私の言葉は、半分はカルロへのかまかけであった。
アザゼルからすでに聞いていても、確信が持てなかったからだ。
そんなことない、と口ごもりながら、カルロはうろたえた。
隠そうとしても、顔に考えが全て出ている。
「うそ、なんで……。地上に出るまで黙っていようと思ったのに……。どうしてそれを知っているの?」
少年は愚かだった。
愛しく、憎くなるほどに。
あきらめたように、私は目を閉じた。
やはり、悪魔アザゼルの言う事は事実だったのだ。
私の撃った弾で、レオナルドは死んだ……。
「カルロ……。私は館には戻りません。もう戻れないところまで来てしまいました……」
体から力が抜けるが、涙も出なかった。現実感がない。
頭の一部がひどくぼんやりする。
レオナルドの温かな笑顔。大きな手。
強く抱きしめてくれた腕。
華やかな相貌、巻き毛の黒髪、背の高い姿。
心細いとき「大丈夫だ」と言って支えてくれた声。
レオナルドはもう居ない。もうこの世界のどこにも居ない。
その現実は私を打ちのめした。
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