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4・世界の崩壊
気が付くと、私は地上にいた。
カルロと共に、地面にうつぶせに倒れこんでいた。顔を上げて周囲を見ると、そこはローマの街だった。
ローマは、ボロボロの廃墟になっていた。空は焼けたように赤い。人気のない街は、瓦礫となり、あちこちが炎に包まれて黒い煙を上げていた。辺りに人は、誰もいない。死体もない。
まるで世界大戦の爆撃の後に見える。
「これ……は……」
私はぼうぜんとなって、辺りを見た。
自分のしたことをまだ認められないでいた。声がかすれる。
カルロが同じように、私の側で起き上がった。周りをきょろきょろと見渡している。
「何これぇ──。ここどこ? 一体どうして、どうなってんのっ!? 何でローマが燃えているの!?」
カルロは声を張り上げて、周りに叫んだ。
「ねぇっ誰か──! 誰かいないの──!? 何なのこれ、俺、悪い夢でも見ているの!?」
カルロの呼び声には、どこからも返事は無い。
私は立ち上がると、黒い神父服についた土ぼこりを、手ではたいて払った。
カルロに近寄り、彼の肩に手をかけて優しく微笑む。
「ええ、これは夢です。あなたは夢を観ているんです」
私はそのまま肩から首に手を滑らせ、カルロの首すじを、自分の手で絞めはじめた。
「────!」
カルロが声にならない悲鳴をあげてもがく。私はまだその細い首筋を締めていた。
「ねぇ、カルロ、私はずっとこうなることを願っていたんです」
ドッ!!
カルロの勢いのよい膝蹴りが、私のみぞおちに入る。強烈な蹴りだ。
「うっ!」
私は思わずうめいて身体を曲げ、カルロの首を掴んでいた指を離してしまう。
その隙に、カルロは素早く身を翻し、私の側から離れた。
「何するんだよ、ばか! ジュリアーノ、一体あんたは何を考えているんだよ!」
絞められた喉をさすりながら、カルロが叫んだ。
「悪魔に願って、この世界を滅ぼすだって?! 冗談じゃねーよ! ふざけんな!」
少年の威勢の良い啖呵が心地いい。
私はわずかに笑っていたかもしれない。
暗い喜びで、背中がぞくぞくしてくる。
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