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自分で好きって言っておいて、今さらだけど。
何もかもはじめてのことで、どんな顔をしてどんな態度をとればいいのか、わからない。
「あ、あのさ。裕生」
「何?」
「い、移行期間って必要じゃない?」
「なんの?」
「その、友達から恋人に一足飛びに行くんじゃなくて、ちょっとずつ……その、手をつなぐとこから……とか」
裕生は横目でわたしを睨むと「い・や・だ」と一言。
しかも、わざとらしく一音ずつ発音して。
「沙希、おれが今までどれだけ長いこと、待ってきたと思ってるんだよ」
彼はわたしの髪を指に絡めて、少しだけ引っ張る。
「15歳の時からだから、1日24時間×365日×9年、いや、9.5年だぞ。もう、1秒も無理」
裕生は眼鏡を外し、コトっと音を立ててテーブルに置いた。
そして、わたしの顎を捉えて自分の方に向かせ、もう一度唇を重ねてきた。
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