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「ふーん。ね、このポスター、素敵だなと思って見てたの。そう思わない?」
裕生は眼鏡のブリッジに指をそえて、5秒ほど、ポスターをじっと眺め、「そうかな」とつぶやいた。
それっきり、コメントなし。
理系男子の裕生は、アートにはまったく興味がないらしい。
いや、アートに限らず、裕生が素っ気ないのはいつものことだけど。
でも、このクールな反応が、今のわたしには大変ありがたかった。
同調して絶賛されたら、今の精神状態ではちょっときつかった、たぶん。
「電車、来ちゃうね。行こう」
「ああ」
「お父さん、喜ばれるんじゃない? 寂しそうだったよ、最近とくに」
「ああ」
もう。「ああ」以外の言葉、知らないのかな、本当に。
バイト先のターミナル駅から、支線に乗り換えて、2駅。
そこがわたしたちの住む町だ。
「寄ってく?」
改札を出ると、裕生は駅前の居酒屋を指して言った。
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