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「なんか、聞いてほしいこと、あるんじゃねえの」
わたしは裕生の顔を見上げた。
「なんで?」
「無理に元気に振るまってるの、丸わかり」
それだけ言うと、彼は先に暖簾をくぐった。
どうして、わかったんだろ。わたしが落ち込んでること。
でも、裕生はいっつも、そう。
態度が素っ気ない割には、わたしの気持ちを敏感に察知してくれる、とっても有難い友だちだ。
「はぁー」
カウンターに並んで座ると、わたしは思いきりため息をついた。
「何があったんだよ」
「9年越しの恋が決定的に終わりを告げました。スグ先輩……あ、田所さんのことね、恋人と結婚するんだって。来年の2月に」
「えっ、てか、まだ、あいつのこと、好きだったんだ。いい加減しつこくね?」
「うるさい。仕方ないでしょ。一度好きになった人はそう簡単に嫌いになれないもん」
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