6・沙希24歳、2月14日

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 でも今は……  不思議なほど心は穏やかだった。 「わたしもすぐ気づきましたよ。スグ先輩、杏子さんが好きなんだって」 「それは……あなたが田所のこと、よく見ていたからよね」  杏子さんはまっすぐにわたしを見て、それからおもむろに頭を下げた。 「ごめんなさい……って、謝るなんて偽善的すぎるとは思う。でもずっと心にひっかかっていて。どれほど、あなたを傷つけてしまったのかと……」  こわばった表情を見せる彼女に、わたしは微笑みを返した。 「好きでした。それも9年も。でも、先輩が杏子さんに向ける眼差しに気づいたとたん、これはとても敵わないってすぐにわかりました。落ち込みましたよ、そのときは」 彼女の美しい顔がかすかに歪む。
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