6・沙希24歳、2月14日

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「でも、おかげで、わたしにとって本当に大切な人が誰なのか、気づくことができました」  杏子さんがテーブル越しにわたしの手をそっと握る。  わたしはその上に自分の手を重ねた。 「だから今は、おふたりに感謝しているぐらいで」 「そう。よかった……」  小さな声でそう言った杏子さんの目がかすかに潤んだ。 ***  二次会にも誘われていたけれど、その日は行くところがあると言って、お断りした。    今日は2月14日だから。  これまでも、何度も裕生のところに行こうと思っていた。  けれど、気持ちがなかなか定まらなかった。  ただ、ひとつだけ、はっきりわかっていることがあった。  わたしが裕生の気持ちを受け入れられないと伝えたら、彼との関係はそこで終わり。  長年培ってきた、幼なじみとしての関係も経つということだと。    本当にそれでいいの?  
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