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ボン・キュッ・ボン!の身体に自信あり。
私、樋口(ひぐち)あすか。子なしの専業主婦してます。
少し前から旦那に内緒で仕事をはじめました。
最近はやりの隙間時間の有効活用ってやつ?
私は、旦那がいない昼間から夕方にかけて仕事します。
スマホさえあれば自宅で簡単にできるところが気に入っているの。
さて、今日もそろそろ仕事の時間。
私は身だしなみを整え、スマホを操作し、準備に取りかかる。
「はぁ~い♪みなさん、こんにちは~!”ひっちぃ”です!
今日も来てくれてありがとう~!すっごく嬉しいです☆」
スマホの前で私はお客さんに手を振りながら笑顔をふりまく。
そう。私の仕事はチャットレディ。
顔は出ないよう微妙なラインで映しながら、スマホ越しにお客さんとお話しして報酬を得ている。
お客さんによってはHな要求もしてくる人もいるけど、紳士的なお客さんも多い。
今日も私は、お客さんたちと楽しく、たわいもない会話をした。
「ひっちぃ~。今日も可愛いね。」
「ひっちぃと会うのが人生の楽しみだよ~。」
「たまにはこれで好きなものを買いなよ。」
ここではたくさんのお客さんが私の自尊心を持ち上げてくれる。
お小遣いもくれる。優しくしてくれる。
私の荒んだ心を癒し、満たしてくれる。そんな場所。
…実は私、旦那との関係はうまくいってないの。
いつまでたっても子どもができなくて、段々と夫婦の関係は冷めていった。
そんな時にスマホでふと見たチャットレディの仕事に目がついたの。
毎日が寂しくて苦痛で、自分の収入がないから肩身の狭い思いで過ごしてきた。
でも、今は違う。
そこそこの収入を得ながら、私は女としての自信を取り戻していった。
仕事をしている時は自分を解放しているような高揚感を得ていた。
あぁ…!!こんな良い仕事があるなんて知らなかった!
今日はいつも以上に私を持ち上げてくれるお客さんが多かったから、H度を多めにしてサービスしちゃった。
もぅ…最高!…やめられない!!やめられないわ!!
私はすごく気持ち良くなっていった。
長めのため息を吐きながら、着ている服を少しずつ着崩していく。
「はぁぁ……。あぁ……んぅ。今日は、いつもよりセクシーなひっちぃをお送りしました。みんなぁ、いつもありがとう~☆」
こうして仕事は無事に終わった。
気づけば日は夕暮れ時を迎えていた。
「さてさて、今度は夕食を準備しないと。」
私は手慣れた手つきで夕食を作っていった。
今日はごはん、味噌汁、もずくの和え物、サラダ、ポークケチャップ。
料理を完成させて少しの間、自由に時間を過ごしていると
「ただいま。」
旦那が帰ってきたので私は玄関前まで迎えに行く。
「おかえり~。今日もお疲れ様。」
そう言いながら私は旦那の仕事用鞄を持つ。
旦那は珍しくほかにも大きな荷物を持っていた。
「それ、何~?」
私は旦那の鞄を部屋まで持って行きながら気軽に声をかけた。
「あ。これ気づいた??プレゼントだよ。」
そう言いながら旦那は私にむかってそのプレゼントを差し出した。
「今日、誕生日だもんね。いつもありがとう。」
そういえば今日は私の誕生日だった。
仕事で頭がいっぱいですっかり忘れてた。
「あ、ありがとう。」
私は旦那のプレゼントを受け取ろうとした瞬間―――。
「49歳のお誕生日おめでとう。”ひっきぃ♪”」
旦那からその言葉を聞いて、私はただただ凍りつくしかなかった。
<終>
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