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そしてまっすぐにその深く吸い込まれてしまいそうな瞳に見つめられ、光里の表情はみるみるうちに期待と歓喜の色へと染まっていった。
「うそっ……本当に……?!」
「あ……でもいきなりこんなこと言われても困るよな? 俺って今は綾乃と付き合ってるわけだしさ」
「ううんっ、そんなこと……っ!!」
昂るばかりでうまく言葉にならない。そんな光里を見た葵は、ホッとしたように柔らかい微笑みを浮かべた。
「昔も可愛かったけど、さらに綺麗になって色気が増した気がする」
そんな甘い褒め言葉は、緊張感を少し緩める代わりにどんどん光里の顔を熱くさせていくのだった。
「いっそのこと今、この気持ちをぶつけてみようか」……そんな期待と不安が葛藤する中、葵の声が心地よく耳をくすぐる。
「だから……聞かせてくれない? 光里の素直な気持ちも」
しばらく視線が混じり合ったが、溢れ出してしまいそうな期待と胸の高鳴りが光里の中から拒否するという選択肢を消し去ってしまった。
そう、もしかしたら……
“もしかしたら、私のことを選んで戻ってきてくれるかもしれない”
……そんな、淡い期待が。
「わ、私もねっ、こんなこと言ったら引かれちゃうかもしれないんだけど……」
「……何?」
「ほんとは、葵くんがいる会社だって初めからわかってて入社してきたの……。偶然カタログ雑誌の表紙に写ってる葵くんを見つけて……そしたら、一気に葵くんへの想いが溢れてきちゃって……! だから、会社名も場所も全部調べて、家もこっちに引っ越してきたんだよ」
頬杖をついていた葵が、その腕を下ろした。
「なんでそこまでして?」
「葵くんに会いたかったの! どうしても……!」
目を見てハッキリそう告げられた葵は解せないといった表情をそのまま返す。
「でも……今さらなんで? 俺たちが別れたのって、光里が他に好きな奴ができたから……のはずだったよな? その男と体の関係も持ったって、光里の方から——」
「違うの。私……葵くんのこと、嫉妬させたかっただけなの!」
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