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「ああ、それとこれは俺の個人的な思いなんだけど……別れた男の性癖なんかを他人に話して楽しんでるような下品な女ってさ……大っ嫌いなんだよね! 俺」
また机に頬杖をついた葵の、その明るい口調と涼やかな笑顔が……
その先の思考を封じ込んだ。
「……そう、わかった……」
「話はそれだけだから」
そう冷たく言い放ち、席を立って引き戸へと向かう葵の足を、再び光里は止めた。
「あんな女のどこがそんなにいいの?!」
悪あがきだってことは、わかっていた。
それでも、意思に反して口が止まらない。
葵が発した自分への甘い言葉……そのすべてがこの瞬間のために計算されていたのだと知った今だからこそ、やるせなさと怒りが負け惜しみとなって次々と口から飛び出していく。
「あの人、いろんな男を良いように弄んでたって…噂で聞いたんだよね、私! そんなの、ただの性悪女じゃないっ! 葵くん、きっとあの人に騙されてるんだよ!!」
「………。」
柄にもなく声を荒げる光里をしばらく見つめてから葵は、小さく吹き出し笑いをした。
「まぁ、男を弄んでたっていうのは間違いじゃないかも」
「やっぱりそうなの?」
「うん。『アッシーくん』に最南端の孤島まで迎えに来させようとしたりー、『メッシーくん』に食事の好みで無理難題押し付けたりー、あと、なんだっけ……男の前でゲップとかオナラしてみたり?」
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