2人が本棚に入れています
本棚に追加
1 梅雨にも空はまばたく
梅雨の空を感じながら私は歩く。
空は人生のように灰色に曇っている。
ついさっきまでは、空はプールのようだった。
知っていた。雨がふることも。荒れることも。
それでも私は外出したかった。濡れたいのかもしれない。
いきなり大きな音をたてて雨が降ってくる。
私は動じない。
ただ機械的に足を前に出すだけだ。
周りの人は傘を差しはじめる。
私は傘を持っていない。
わざと持ってきていない。
雨は私をたたきつけるように打つ。
流れるように髪から水が落ちる。
雨音が「元気だせよ」とでもいいたげに
私の肩をたたく。
最初のコメントを投稿しよう!