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 施錠時刻の5分前を報せるチャイムが校舎内に響き渡る。 「いっけねぇ!」 ラリーに没頭していた二人は大慌てで台を片付け、 格好はジャージのまま外へ出た。 雨足は幾分弱まってはいたが、まだ降っていた。二人は並んで傘を差す。 「そういや、空井とこうやって一緒に帰るのは初めてか」 「そうだね」 しばらく無言が続いた頃、ふと空井が尋ねる。 「ねぇ、僕が廊下で練習しているのを知ったのって今日?」 白戸は答え(あぐ)ねた。けれど、敢えて嘘を吐く必要も見出せなかった。 「……ううん」 「やっぱり」 「え、気付いてたのか?」 そっと頬を緩める空井。 白戸は赤面を隠すように、額に手を当て、大袈裟に悔しがってみせた。 「俺……明日もう一回、谷本先生に掛け合ってみるわ」 おどけた空気感に馴染ませて発した一言は、間違いなく冗談ではなかった。 「卓球したいだろ?」 水面に映る淡い光をまじまじと見つめる空井の誠意にも偽りはない。 「ついて行くよ。僕だけ抜け駆けするのは嫌だし」 「じゃ、決まりだな」 決起を誓った二人には、芯を持った雨音が、今度は太鼓の演奏に聞こえた。 まさに自分たちを鼓舞しているようだった。 勇気の灯火はどれほど強い雨にも決して掻き消されはしない。 奮い立つ青年が、曇りなき信念が闘い続ける限り。
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