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翌日は朝から土砂降りだった。
白戸は、天候に拘わらず練習ができる室内競技の恩恵を実感しながらも、
これから数時間一切球を打てない空井のことを思うと、たちまち表情が曇る。
練習直前のストレッチで、彼は部長の隣に座った。
「あの、一般組の一年生っていつから練習に参加するんすか?」
「大体、三年生が引退してからかな。例年はざっと夏休み前だね」
さも常識かのような答え方に肩を落とした。
今は6月中旬。夏休みが始まるのは8月手前から。
空井の努力が報われるにはまだ程遠かった。
「ずっと球拾いしてもらってるから悪いなと思いまして……」
「まぁな。でも、監督が決めたことだしよ。
打てない一般組の分、俺らが頑張ればいいんじゃないか?」
「そうですけど……」
不意に戦慄が走る。練習風景を観察しに、顧問が体育館へやってきた。
「お願いします!」
次々と威勢のいい挨拶が飛び交う。程なくして集合の合図が掛かった。
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