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確かに呼び掛けてはいるのに、顧問は依然振り返りもせず黙ったまま。
「谷本先生……」
「もっとはっきり喋れ」
あまりにも手痛い洗礼に面食らった白戸であったが、自ら頬を叩いて突き進んだ。
「先生! 一般組も練習に混ぜていただけないでしょうか?」
とうとう言った。言ってしまった。白戸は膝の震えをはっきりと感じた。
皆が練習の手を止め、彼の行く末を注視していた。
冷酷な文言はわざわざ体育館中に聞こえる声量で、首も動かさず言い放たれる。
「馬鹿か。練習の質が下がるだけだろ。お前は自分の心配だけしとけ」
「ですが……」
顧問は全く取り合わない。
手のジェスチャーを合わせて、勇気ある申し出を邪険に追い返す。
公開処刑に打ちひしがれる白戸。
空井にも見られていたであろうことがひどく恥ずかしかった。
これ以上攻め込めないことは明らか。
気落ちした彼はその後の練習にも全然身が入らなかった。
打ち手を見失ったピンポン球は緑の卓上を2バウンドし、
甲高い泣き声を上げるのだった。
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