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 その夜、白戸が昨晩と同様に体育館の後片付けをしていると、 出入口の向こう側から、聞き覚えのある打球音がした。 改めて隙間から覗けば、案の定空井が血眼で球を追いかけている。 頑張れ。胸の内から密かに声援を送る白戸。 「あっ……」 いつの間にか白戸の右足は、レールを跨いで一歩踏み出していた。 気配を察知した空井がまず卓球シューズを捉え、段々と目線を上へ移していく。 動揺して引き返そうとする白戸に、彼は待ったをかけた。 「白戸君、今日はありがとう。僕ら一般組のために」 扉に半身を隠した白戸はどういう顔をすればいいのか分からなかった。 「今から打つか……?」 誤魔化し半分で咄嗟に飛び出したこの提案は正しいのか否か。 ともかくこれが白戸にできる精一杯の思い遣りだった。 「うん!」 惜しみない悦びがぐらつく架け橋を一思いに渡り切る。 白戸は玄関で待つ友達の一人に謝罪のメールを送った。 『悪い。先に帰っといて』 二人はしまいかけていた台を開き直し、ネットを隔てて向かい合う。
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