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基本を押さえたら、次は多球練習。
白戸が絶え間なく球出しをし、空井がそれを全て打ち返す。
初めはかなりのハイペースに食い下がるのでやっとだったが、
少しずつコツを掴み出した。
ぐっと軽くなったフットワークのおかげで、
左右に振られてもある程度追いつけるように。
「成長早いじゃん」
妥協のない球出しが続く中、空井は額の汗を存分に煌めかせる。
「だって、卓球楽しいから!」
想定外の清々しさに白戸は口角を上げる。
知らぬ間に見落とした本質を今一度思い出した。
推薦組として活動する彼は、顧問の辛辣な目や
望まれる成績を残さなければならないというプレッシャーをきっかけに、
いつしか卓球を楽しむ気持ちを忘れていた。
魂を震わせる言葉には自ずと本音が呼応する。
「……そうだよな。卓球、楽しいもんな!」
何百といった数のピンポン球が、
弛まぬ努力の値打ちを示すかのように、意気盛んに転がっていた。
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