恋の病

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恋の病

「心拍数が異常ですね」  服越しに俺の胸に触りながら、意地悪な彼氏が言う。 「直接、肌に触れて確認してみましょうか?」 「ば、ばーか! ばーか!」  そんなことはさせまいと、俺は彼氏の身体を拘束するようにぎゅっと抱きついた。  彼氏はふっと笑う。 「こんなにどきどきして、何か心当たりがあるのでは?」  お医者さんごっこ……じゃない。彼氏の職業は本物の医者だ。  オフの時、彼氏はこうやって医者モードになって、俺をからかって遊ぶ。 「教えて下さい? 僕の大切な、大切な人?」 「……」  知っているくせに。  俺は、いつだって、お前と居る時は、どきどきしっぱなしだって、知っているくせに……! 「……ばーか」 「お口が悪いですね」  お薬を塗りましょう、と柔らかくキスされる。  また、俺の心臓がどきどきと鳴った。 「これは……恋の病ですね」 「お、お前! よくそんな恥ずかしいことを言えるな!」  照れながら彼氏の胸に顔をうずめると、そこからも聞こえてくるのは、どきどきという音で――。  ――お互い、恋の病にずっとかかっていような。  そんな恥ずかしい願いを、俺はまだどきどきが治まらない心の中で思った。
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