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夜の十時、シャワーを浴びようとしたらインターフォンが鳴った。
「どなた?」
「俺だ。藤沢だ。こんな時間にすまんが、話がある」
一瞬ドキッとしたが、無理に笑顔をつくって、友人の藤沢を部屋に上げた。大柄でいつもは陽気なやつが、憂え顔をしてソファにどかっと座った。
「実は、五十嵐のことで来たんだ。どうも、あいつが怪しい」
やっぱり、そのことか。今、俺たちが属している研究室には悪い噂が流れている。半導体をさらに微細化するという三年がかりの研究の成果が実り、その特許を申請したのだが、それとそっくりな特許の申請をライバル会社がしているというのだ。どうやら我が社のデータが盗まれているらしい。目下我が社はその犯人捜しで躍起になっている最中なのだ。同じ研究室の五十嵐が怪しいという噂は、俺の耳まで届いている。
「藤沢、止せよ。俺たち三人は同期入社で、六年間共に頑張って来た仲じゃないか。仲間を疑うなんて」
藤沢は俺が出した缶ビールをあおった。
「大月、お前気づかないか? あいつ、このごろ着るものや身の回りのものが派手になっているぞ」
ドキリとした。
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