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彼女が両親との旅行は、病気で入院していた父親が、やっと退院出来たお祝いだったと言っていた。いつ、どうなるかなんて分からない。
「美味そうだな。ホットケーキ」
小皿に切り分けたパンケーキを頬張る二人の手には皺があり、ふっくらとしていた母の手は萎んで見えた。
「もっと仲良くなったら、連れてくるよ」
「ふられたりしてな」
「もう。お父さん。やめなさいよ」
小競り合いする両親を、彼女に紹介出来る日が来たらいいなと思いながら、彼女にメッセージを送る。
『デザートが美味しいお店、教えてくれてありがとう。今度は一緒に来ませんか?』
勢いで送ってしまって少し後悔したが、返事がすぐに来て、心臓がどきんと跳ねた。
『良かったです。はい、ぜひ行きましょう』
テーブルの下でガッツポーズする。
母がちらりと見て、「やったね」と口を動かした。何で分かるのか不思議で、恥ずかしかった。
「うまくやれよ」
父が俺の皿のパンケーキに手を伸ばし、美味いと呟いた。
了
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