君の香り

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月曜日。 憂鬱な気持ちで朝を迎え、朝から夕方まで雨が降ると言う天気予報を見る。 いってきますと、自分しかいない部屋に向かって呟いて部屋から出る。 彼に選んでもらった傘しか無い事に少し気分が沈む。 学校について下駄箱を見ると手紙が入っていた。 彼の字だった。 何だろうかと思って、読んでみる。 その時の自分の顔はもの凄い破壊力のあほ面だったと思う。 その手紙には、朝来たら美術室に来て欲しいと言う旨が記されていた。 美術室は彼の聖域だ。どれだけ仲が良くなっても活動中に入ったら怒られる。 この時間はまだいつも絵を描いているはずだと思ったが、彼からのお願いだと思うと逃げ出す選択が思いつかなかった。 ノックを2回、深呼吸を2回。 中から、愛おしい彼の声が聞こえた。 もう一度深呼吸をして入る。 美術室は彼の匂いと絵の具の匂いで充満していた。 その香りに胸が締め付けられて、涙が瞳にたまる。 心配したような声を出す彼を見つめられなくてそっぽを向くと、彼は困ったような雰囲気で話し始めた。 聞いていくうちに自分は盛大な勘違いをしていたことに気が付いた。 彼の香りを部屋からなくすためにわざわざアロマをたいてみたり、買って貰った思い出深い私物を押し入れの奥底にしまったり。 そんなことをしなくても、自分の思いは彼に届いていたのだ。 「勘違いさせちゃったみたいでごめんね。時間、沢山もらっちゃってごめん。泣かせちゃってごめん。俺は君の事が、霧雨零の事が好きです。」 此方こそ付き合ってもらいたいと言って優しく頭を撫でてくれる彼を見つめる。彼は相変わらず優しい顔をしている。こんな君が大好きなんだ。 2人で窓の外を眺める。 昨日は寒かった雨が、今日はこんなにもあたたかいなんて。 雨が昨日の自分の事も今日の自分の事をも勇気づけて、付き合った記念に、天気雨を見せてくれているみたいだと思った。 虹は出なかったけれど、これくらいの些細なお祝いが自分からしたらとても嬉しかった。 いつの間にか雨の音と香りで心が凪いでいた。 これからも、よろしくね。 そう呟く自分に彼は驚いて自分の大好きな顔で笑った。 【Fin】
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