君の香り

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しとしとと窓に滴る雫を瞳で追いかける。 暗い気持ちに比例して天気が悪くなったような気がして仲間意識が芽生える。 胸の苦しみをどうにかしたくて息を吐く。 勇気を出して家に誘って、告白をした。 心臓が口から出てきてしまいそうなほどに緊張した。 彼がどんな反応をするのか、怖かった。 こんな時ばかりに出てくる神頼みに申し訳なくなりながら両手の指を絡めて強く握った。 気持ちを伝えた後の彼の困った顔が今でも忘れられない。 胸につかえるこのもやもやを消し去りたくて、彼を忘れてしまいたくて携帯の電源を切り、立ち上がる。 家を出てすぐの、交差点の先にある公園のブランコに座る。 何もかもを忘れて、なかったことにしてしまいたい。 明日の学校で、会うことが怖い。 学校に行きたくない。 そう考えていたら雨脚が強くなった。 そんな思考を消し去るかのような強い雨に打たれる。 今なら何もかもなかったことに、彼を忘れることが出来る気がして、ブランコから降りる。 自分の顔についている水滴が一体何なのか、そんなことはどうでも良い。 この雨に打たれて全てを忘れてしまおう。
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