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別れは突然やってきた。だけど、少しも寂しくはなかった。
むしろ元カレの顔をもう見なくて済むと思うと、せいせいしたぐらいだ。
ピンポーン。玄関の呼び鈴がなった。
彼がやってきたのだ。
私は玄関に向かった。
ドアを開けると、彼が赤いバラの花束を持って立っていた。
「やあ、これ君に贈ろうと思って買ってきたんだ」
「わあ、キレイ。ありがとう」
「上がってもいいかな」
「もちろん。さあ、どうぞ」
彼をリビングへと通す。
この家は、今は亡き両親が若いころに購入した一戸建てだ。
子供のころから暮らしている私にとっても、思い出がたくさんある我が家。
今、ここで私は一人暮らしをしている。
彼はふかふかのカーペットが敷かれた床の上にあぐらをかいて座った。
私は訊いた。
「ねえ、お腹すいた?」
「ああ。昼食をごちそうしてくれてるんだよね。昼飯食べてないから、お腹ぺこぺこだよ」
「私、料理にあまり自信ないから、お口に合うかどうか不安だけど……。すぐに持ってくるね」
キッチンへ向かい、お手製のチキンライスをお皿に盛った。
リビングへ、お皿を持っていく。
彼は目を大きく見開いた。
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