ありとあらゆる殺し方

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ありとあらゆる殺し方

そうして人間ひとりひとりに神は武器を与えた。神が最強だと信ずる武器を。 斬れば山をも真っ二つにする剣、突けば大岩をも燃やす槍、射れば森を一瞬でなぎ倒す弓と矢。だがその持ち主は最初に死んだ。銃という武器を使う者、大砲や爆弾、空を飛び、海を走り、そして潜る武器を使う者に。そうしてそれらは魔法に倒された。だが魔法を使う者は呪詛に倒され、呪詛者は疫病に倒れた。病毒を操るものはやがて物質の根源、『核』を操るものに殺された。 そうして神の三日間が終わろうとしていた。 「いやー、きれいさっぱりなんにもなくなっちゃったわね」 ひとり荒野にたたずむのは、ひとりの女の子だった。ボロボロの女子高の制服を着ていたが、顔や体は傷ひとつなく、綺麗なままだった。 すでに土も水も空気も放射能で汚染され、もはやまともに動けるものなど存在しない。いやこの環境下で、生きているものなどいないのだ。 「なのにあんたはまだ生きている…。どういうことかな?」 目の前にいる大男に少女は聞いた。全身ズタボロだがまだ力は残っている。その気になれば少女の細い首をねじ切ることぐらい簡単なようだ。 「おまえこそ生きているのが不思議だ。よっぽど特殊な体なのだろう。ならばその体を寄こせ」 そう言って大男は少女に向かって来た。少女は抵抗らしい抵抗はせず、やすやすと大男に捕まった。 大男の腕の中で、少女は死んだ、かに見えた。
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