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最愛
大きなクレーターの中心にいた。まだそこらはチロチロと炎が噴き出しくすぶっている。やり過ぎたかな、と思ったが、もうこれでかたがついたんだと思い、ちょっとうれしかった。もう後は何もしなくていい。ただボーっと、空を眺めて、命尽きるまでそうしていればいいだけだ。もっとも、不死の自分に命尽きる日が来るのかは、わからなかったが。
「いい気なもんね」
そう心の中で声がした。
「な、なに?なんなの?」
あたしは心底狼狽した。あたしの心に直接話しかけてくるなんて?
「驚かないでよお姉ちゃん」
「そ、その声ってエミちゃん?」
「そうよマイお姉ちゃん」
「あんたどうして…」
「それはね…」
エミの神から与えられた能力は滅びない魂、だった。魂さえ滅びなければ、体を取り替えてずっと生きていける。あたしの不死と同じ、もしくは対極をなすものだ。わたしと別れてのち、エミはそうやってずっと人の体を乗っ取って戦って来たという。
「じゃああたしの魂を殺してこの体を乗っ取るのね。やられたわ」
「まさか、そんなことしないよ。だって一番大好きなお姉ちゃんだよ?」
「でもそれじゃ…」
あたしはふたりが生き残る術を見いだせなかった。どっちかが死ななければ、これは終わらないと思った。それが神々の賭けの行きつく先なのだから。
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