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この荒れすさぶ世界に祝福を
「ていうか、あたしの体にあんたが寄生するってあり得ないんじゃない!」
「寄生って言うな。せめて共生って言って。ふたりともひとりじゃ生きていけなかったんだから」
ひとり荒野で、大岩に座り込んでいる少女がなにやらブツブツとつぶやいている。そこは猛毒の放射能と、ありとあらゆる害毒が漂う大地に、ポツンとだった。
「あたしは不死だから肉体はいくらでも再生できます!」
「でもたったひとりでずっと生きていくの?」
「う」
「あたしは肉体がなければただの漂泊する魂になる。そりゃ石や土に魂を憑依させればなくなりはしないけど、それこそ何万年もむなしいだけよ」
「そりゃまあそうね」
「だったら昔みたいにお姉ちゃんと二人で生きていけたらって…」
そんな昔じゃないでしょう、とマイは思ったが、そんなことはもうどうでもいい。ひとつの体の中にふたりの心。まあ、それで当分飽きない、そう思った。だからこんなになった世界だって、まあまあ楽しく…。
「やってけるね!」
あの愚の神エリウレスの思惑がどこにあったのかはわからないし、とにかく姉妹はひとつの体で生きていくしかない。しかし賭けに勝ったエリウレスがただひとりこの世界を支配する。それはいったいどう…まあそれはいつかまた。
とにかく彼は、この荒れすさぶ世界に終止符を打たせ、そして祝福をした。愚かな神と、愚かな人間のため、に。
――おわり
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