一言の言葉で

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「本一冊探すのに時間かかりすぎなんですけど。探すの早かったらもう少し早く帰れたのに」  お客さんの心ない言葉を投げられて、「時間がかかってしまい大変申し訳ございませんでした」と謝罪の言葉を言っても「ほんとしっかりしてくれない?こっちにも都合があるんだからさぁ」なんてネチネチと嫌味を言われた。  その後、先輩から「見つかりにくいところにあったんだし、ちゃんと探してほしいって言われた本を持ってきたんだから偉いよ」とフォローされたけれど心はボロボロだった。あの後、仕事を終えるまでの時間、カウンターでどんな対応をしていたのかなんて思い出せない。  仕事を終えて、家に帰るとあの時堪えていた感情がプツリと糸が切れたようにボロボロと涙が溢れてくる。 「向いて、無かったかなぁ、私……。夢は夢で終わらせていた方が、楽だったのかなぁ」  正直、あの時投げられた言葉は「お前、この仕事向いてない」と言われた気がしてならなかった。
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