一言の言葉で

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 今日もお客さんから「この本借りたいんですけど、見当たらなくて」と、本を探してきてほしいと要望があった。 「かしこまりました。こちらの本が書庫の方にありますので今持ってきますね。少々お待ちください」  お客さんが借りたいと言っていた本が置かれている場所を見ると少し複雑な配置の所にある本だった。  本が置かれているところは大体日本十進分類法という本の分類が細かく決められている図書分類法に沿って配架(本が置かれている)されている。図書館独自の配架方法があり、よりお客さんに本を読んでほしい本のジャンルを前に置いたりするなど本の置き場はその図書館によって全く異なる。 「表の医学の本はここでは細かい数字まで書いてるから探しやすいんだけど、ここは小数点まで書いてない分類表記で同じ頭文字が並んでると見つけにくいんだよなぁ」  ここというのは図書館で働いている人しか入れない書庫のこと。比較的昔の本が置いてあるここは棚が大きく脚立を使わないと本が取れない。また、本の分類記号が細かく背ラベルに書いてない為、同じ棚を行ったり来たりすることも多々あり、見つけるのに一苦労する。 「えっと、494,494っと……。やっぱりいっぱいある!この中から探すのは大変かも……」 (ちなみに494とは医学の外科学に分類される本のこと)  同じ分類記号の中から借りたい本を探すのに少し時間がかかってしまい、カウンターの方に戻って行くとお客さんから思わぬ一言が飛び出した。 「司書さん、立った一冊持ってくるのに時間かかりすぎじゃない?」
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